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猫ちゃん
しのだひろえの歩っとタイム Vol.18

思い出は小道にあり、人生をより豊かにしてくれる道を行く~都電荒川線を歩く旅①~

歩くことはあなただけの自由な時間、秋の空と風を楽しみながら、気ままにゆるりと歩いてみませんか。今回は新宿区早稲田から荒川区三ノ輪までの東京さくらトラム(都電荒川線)沿いを、てくてく歩いてきました。

早稲田からスタート

大隈通りの写真

前回の大隈庭園から大隈通りを通り抜けて、都電荒川線・早稲田駅に向かいます。大隈通りという名前から大通りを想像しますが、この道はひっそりとした小道。早稲田大学生たちとすれ違いながら「自分がこの年頃だった頃は一体どんなことを考えていたんだろう」なんて何十年も前のことを思い出し懐かしい気持ちになります。

都電荒川線・早稲田停留所の写真

静かな大隈通りを抜け少し歩くと見えてきました、都電荒川線・早稲田停留所です。

都電荒川線・沿線案内の写真

ちなみに、現在「東京さくらトラム」という愛称で呼ばれる都電荒川線ですが、このコラムでは都電荒川線としてご紹介していきますね。都電荒川線は東京に残る唯一の都電で、荒川区・三ノ輪橋~新宿区・早稲田間(12.2km・30停留場)を走っている一両編成の電車です。

ではこの都電荒川線・早稲田停留所からひと駅ずつ歩いていきましょう、レッツウォーク!

小さな何かが想い出になっていく

レッツウォーク!と意気込んだものの、早稲田停留所も、その次の面影橋停留所も新目白通りという大きな道路にあるため、このまま歩くんじゃぁつまらない!ちょこっと寄り道して車通りの少ない小道をお散歩気分で歩きたい気分です。

きょろきょろと辺りを見渡すとありました、神田川沿いのウォーキングコースが。いきいきウォーク新宿ですって、やったー!川沿いをてくてく自分のペースで歩けるなんてリフレッシュできそうです。

いきいきウォーク新宿のご案内の写真
神田川の写真
「山吹の里」の碑の写真

神田川沿いの小道を歩き始めると、さりげなく佇む石碑を見つけました。立ち止まって読んでみると、「山吹の里」の碑というそう。1686年に建立された供養塔を転用したもので、神田川の改修工事が行われる以前は近くの面影橋という橋のたもとにあった様子。昔ながらの石碑が壊されることなく暮らしの風景に溶け込んでいることは、ひとりの街歩き人として嬉しいことです。こういう小さな何かが街の雰囲気を作り私たちの想い出になってくれているなと思うから。

面影橋停留所の写真

ほどなくして、2つ目の停留所「面影橋」に到着しました。早稲田からここまでずいぶん近かったような。新目白通りを歩いていたらきっともっと早かったですね。

ふ、ふ、踏切がない!?

さぁここからスピードアップして次の学習院下停留所を目指します。ここへの道筋も大通りではなく少し外れた住宅街を歩いていきました。平日の住宅街をのんびり歩いていると、一緒に散歩を楽しんでいる夫婦、車いすを押しながら今日はお昼を何にしようかとを話す親子、買い出し中のお母さんなど人々の日常を目の当たりにすることができます。家族の日常の当たり前の風景って、胸にじんわりくるものがありますね。

学習院下停留所の写真

さて住宅街を抜ければ学習院下停留所に到着です。なんと言いますか、先程までと違ってずいぶん緑の多い停留所です。ほんわかのんびりな都電荒川線らしい風景にほっとします。

よしよし、この調子。こんなに簡単に3駅歩けちゃっていいの!?とこの時は思いましたが、先はまだ長いですよね。

鬼子母神前停留所の写真

学習院下停留所から、次の鬼子母神前を目指して歩きます。ここが意外と迷うポイントでして、ちょこっとばかしうろちょろして大通りから少し外れた鬼子母神前駅に向かう道を見つけることができました。都電に沿ってのびる道を歩けば鬼子母神前停留所に無事に到着です。

わーちょうどかわいい電車が到着している~、やったね!思わず写真パチリ。車両は現代風のスタイリッシュなものからレトロ調のものまでありますが、写真のレトロ調は都電の雰囲気にあっていて好きですね。きっと人気だと思います。

そういえば・・学習院下もここも踏切がありません!踏切は全線を通してあったりなかったり。踏切がなくて大丈夫!?なんて心配になりますが住んでいる人にとっては当たり前の風景のようです。東京都は思えないくらいのどかだなぁ。

夏目漱石、小泉八雲、泉鏡花が眠る場所

このまま線路沿いに歩けば都電雑司ヶ谷に到着するのですがここで少し寄り道してみましょう。寄り道先は雑司ヶ谷霊園です。

雑司ヶ谷霊園は、夏目漱石の「こころ」にも登場する場所です。鎌倉の海岸で「私」と出会った「先生」は月に1度、なぜか雑司ヶ谷霊園にある友人の墓参りに足を運んでいる・・というように雑司ヶ谷霊園を舞台に物語は展開します。
またこの雑司ヶ谷霊園には夏目漱石、そして小泉八雲、泉鏡花、永井荷風も眠っていることでも有名です。

さて、ふと歩きながら大きな松が目に入り近寄ってみると、このあたりが江戸中期から鷹の飼育や訓練を行う御鷹部屋がありその様子を伝える松だということが分かります。 確かに江戸地図でも、今の都電雑司ヶ谷停留所のあたりに大きな御鷹部屋御用屋敷がありますね。

「御鷹部屋と松」の写真
大きな松の写真
現代地図の写真現代地図
江戸地図の写真江戸地図
都電雑司ヶ谷停留所の写真

名所とはいえ長居をするところではありませんので都電雑司ヶ谷停留所にすたらこらさっさと向かいます。天気の良い日の誰もいないホームって田舎を思い出させる懐かしい景色ですね。

最短最速ではなく寄り道・無駄に楽しみがある

停留所をひとつひとつ巡りながら、自分の心の声のままに歩みを進めると、そこに住む人々の暮らしぶりや日常に触れることができます。学生の声、自転車のブレーキ、スーパーの呼び込み、電車の通り過ぎる音など、日常であればあるほど郷愁を誘い懐かしさがこみあげてきます。

オシャレでかっこいい街を歩くのもいいし大通りは便利。だけれども暮らしが息づく何気ない街と風景に出会えるのは一本奥に入った小道です。

思い出は小道にあり。いつもの道を一本はいるだけで、人生をより豊かにしてくれる何かに出会えるかもしれません。

さて都電荒川線を歩く旅はまだまだ続きます。次回は都電雑司ヶ谷からてくてく歩いていきましょう!

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