しのだひろえの歩っとタイム Vol.70
ささやかな暮らしの中に身近な旅を~中野小路さんぽ
新参者のほうが、地元の人でも知らないような道を見つけられることがある。新鮮な感性で街を歩くからだろう。さらにGoogleマップなどの地図アプリがいくら発達しても実際に歩いてみないと分からない道や意外な通りはあるし、いつの間にか開発されて風景が変わっている道もあるもの。
今日はそんな「地元の人も意外と知らない道」を歩きたいと思う。路地裏こそ、小路こそ、人々の暮らしぶりが分かるというものだ。
中野新橋から西新宿へ
中野区といっても広いのだが、中央線沿いではなく、丸の内線・中野新橋駅から歩くことにする。中野新橋駅と聞いてピンとこない人もいるかもしれない。ひとつ手前の中野坂上駅から方南町駅に向かう分岐線の駅のひとつだ。赤い「中野新橋」が印象的な街だ。
分岐線沿線の街は、この中野新橋に限らず魅力的だ。こじんまりしていて、地元の人しか知らないいい店があったりするから。ちなみにかつてこの街には貴乃花部屋があり、優勝時には大変な賑わいをみせたという。優勝パレードをテレビで見た人もきっといるだろう。
小路だからの発見がある
車通りの多い道ではなく、人通りの少ないくらいの小路を選んで歩く。「こんな奥まったところに銭湯があるんだ」「ここに何で橋があるの?」そんな発見が小路にはある。
中野と新宿の区界が入り組むあたり、西新宿にはいってすぐあたりにあるのが神田川支流の暗渠である。写真では分からないが、道路が橋になっているから、なぜ?と思いながらふだん歩いている人も多いだろう。
さらに歩みを進めれば立派な庚申塚もある。
ぼんやり小路を歩いていると見過ごしがちだが、こうしてみると小さな街の片隅にも昔の人々の暮らしぶりを今も伝えてくれるような風景が広がっているものなのだ。
今回のルートをご紹介しておく。中野新橋からスタートしゴールは新宿中央公園。ひたすら小路を歩くルートだ。
裏道小路を新宿まで歩くルート、きっともっといろいろな発見があるから歩いてみてほしい。
ささやかな暮らしの中に身近な旅を
見知らぬ街を歩けば、見るものすべてが新鮮でまるで旅にでもきているようだろう。一方で見知った街を歩けば「いつものこの道とあの道がここでつながっているのか」という体験を味わうことができる。ふだんの延長線上の発見があることは、ささやかな暮らしの中に楽しみを与えてくれる。当たり前のように生活し知り尽くした街にも、また違った一面があることを知れば街の見方も変わる。
そう思えば、街を歩くことは新しい発見を見つける旅であり、いつもの視点を変えてくれる旅でもあるといえる。特にこういう小路には、思わぬ発見や歴史が垣間見えるもので、味わいがある。
ささやかな暮らしの中に身近な旅を。身近な小路も楽しめるようになれば、きっと新しい楽しみが生まれるはずだ。