しのだひろえの歩っとタイム Vol.58
美しさも驚きも楽しさも、歩いて見つけよう~区役所アート・世田谷編~
ある時私はタヌキを見た。まさかタヌキにでくわすとは思ってもいないもんだから、太ったネコか、はたまたイヌか?と目を凝らしたものの、どう見てもネコでもイヌでもない。
体が重そうだし、とにかく大きい。とにかくペットではないことは確かだった。
今日は、そんなタヌキとの遭遇を果たした世田谷区をピックアップしていこう。
地を生かした世田谷の区役所アート
世田谷区といえば下北沢、三軒茶屋のように、常に新しいカルチャーで若い人たちを惹きつける街もあれば、奥沢のようにしっとりした閑静な住宅街もある。いずれにしても私としては世田谷にはオシャレな印象をもっている。
そんなイメージからか、華やかな女神像や彫刻の区役所アートがあるのかと思ったら、その推測は大外れだった。正直、これといったアートがない。あるとしたら写真の噴水である。
噴水といっても水は流れておらず、きっと水が流れていたんだろうと思わせるつくり。ただ大きい。
ふと、世田谷区役所の中庭に立って区役所を見てみると、あれ、この区役所自体が昭和的で無機質で味のある佇まい。青い空と相まって絵になる風景ではないか。質感もいいしこの区役所自体が区役所アートといっても良いのでは?さすが、存在がオシャレ、世田谷である。
いでよ!タヌキ!
さて、冒頭のタヌキの話である。長野出身の私からすればタヌキなんぞ、「今日もでたか」というくらい人の暮らしのすぐ横にいた身近な存在である。しかし、この東京、世田谷でタヌキを見たとなれば、話が違う。まさか東京に、まさか世田谷に!田舎ではなく都会でみるタヌキには脅威を感じ、一瞬身構えてしまった。
あちらは人間に慣れているのか、逃げてはいるがその足取りはのそのそしていて、どうみても軽やかとは言えず、かったるそうな歩みと背中の丸まり具合には、妙な既視感さえ覚える。
その歩き姿、人間界でもよく見る・・。
ついには、私の目の前を横切りジャンプをするタヌキのたぷんと揺れるおなか、高いとはいえないジャンプ、着地をした時のどっしり感には、中年の哀愁まで感じてしまった。
このタヌキ、すみずみまで庭の手入れが行き届いた素晴らしいお寺で遭遇したのだが、この付近では畑も多く、どうも農業もさかんなようだ。世田谷と農業、なかなかイメージが一致しないが、足を運んでみると確かに農業風景をみることができるし、のんびりした景色に心がなごむ。
心がなごむ風景といえばこちらもである。これこそどこか異国に来たような時代をまたいだような、そんな錯覚に陥る美しい風景である。タヌキをみてから数分でこの景色が見れるのだから、世田谷区、おそるべし。
美しさを感じる瞬間
どの街にもいろいろな景色があり美しさがある。近代的な高層ビルが立ち並び、窓で反射した光がキラキラして美しいと感じることもある。強い太陽から身を隠し、木漏れ日の中を歩く時の緑と光のコントラストは美しい。水面で反射した光が、葉にはね返り水がゆらゆらゆれるさまも時間を忘れるようだ。
こういう美しさを感じる瞬間は身の回りに溢れていて、必ずしもそれは自然のものとも限らず芸術とも限らず、自分の心の状態とともに美しさはある。そこにどういう美しさを見出すかは自分の心持次第で、それは楽しさや面白さも同じ。
タヌキだって脅威に感じたり、愛らしく感じたり、それはこちらの心持次第だ。あらゆる美しさと楽しさと面白さを求めて、さぁ今日も歩こう!