しのだひろえの歩っとタイム Vol.44
ずっこけたっていいじゃない~区役所アート・大田区編~
東京都内でもっとも面積の広い区をご存じだろうか。そう、それこそ大田区である。川を越えればそこは神奈川県川崎市、そして品川区、目黒区、世田谷区、江東区と隣接した陸と海の路をもつこの区の歴史や魅力を区役所アートを通じて紐解いていこう
他の区とは一線を画す、のほほん系
ちょい、ちょい、ちょい待って。区役所にあるにしてはずいぶんとゆるキャラでは。
今まで様々な区を巡ってきたが、たいてい区役所らしい威厳のあるオブジェや塔、「わが区の精神とは」という区のミッションや宣言が込められた石碑やオブジェがあったものだ。
でも違う、大田区は違う。完全な脱力系、のほほん系、われ関せず系。このゆるさ、ちょっとずっこけ。
区役所は立派ではあるが、この区役所アートのおかげでやけに親近感がでてきた。
大田区の多様性、なんでも受け入れる
大田区というと個人的には蒲田駅がもっともよく使う駅である。蒲田と言えば餃子、そして深作欣二監督の映画「蒲田行進曲」で、JRの電車発車曲にもなっているはずだ。昭和の名映画だが、人間くさいというか暑苦しいくらいの人情というか、とにかく熱量の高さがこの令和においてはすごく懐かしい。蒲田の街には今も昭和の雰囲気があり、画一化されたスマートでスタイリッシュな街なみとは一味違った複雑な味わいがある。もっとも高級住宅街として知られる田園調布駅も大田区なのだと考えると・・なんでもありといった感じで、大田区の多様性を感じる。
ずっこけたっていいじゃない。
ふと気がつくと、どこの街も景色が街なみが画一化され、同じような街になっているように感じるのは私だけだろうか。かつてはオシャレに見えたロゴや食器にこだわったデザイン性の高いお店さえ、似たようなお店が増えた今は「よくあるスタイル」「よくみるデザイン」になってきたようにも思う。しかも10年やそこいらの短い期間に。どこもかしこもスマートでシンプルでオシャレはあるが、人々の生活まで画一化されていくようで、なんだかよくわからない、それがいいのか悪いのか。暮らしや生活はもっと生々しくて、例えば掃除をさぼれば埃はたまるしお風呂の鏡の水垢なんて曲者だし、掃除をしたのにすぐに油はねで汚れるガス台を見るのは切ないし。そういう暮らしの痕跡や生々しさを見せないように暮らすオシャレな生活や生き方もいいのかもしれないが、蒲田行進曲のようなずっこけで暑苦しさ全開の人間くさい生き方もまたいい。でも今はかっこ悪くても生き通す、ずっこけた生き方の方が勇気がいるのかもしれないが。