しのだひろえの歩っとタイム Vol.39
新宿の印象が変わる!?平和を強く祈る街~区役所アート・新宿編~
本日ピックアップするのは「新宿区」。東京の中でもっとも全国的に知られた区と言っても過言ではないだろう。昼夜問わず人があふれ集まる街、新宿区の「区役所アート」をのぞいてみよう。この区役所アートを紐解くと思わぬ区の歴史や想いが浮かび上がってくる。
平和の泉、平和の灯
歌舞伎町の一角にある新宿区の区役所アートは、題して「平和の泉」である。
数ある区役所アートの中でも水をたたえたアートは珍しい。この水は長崎市平和公園の「平和の泉」の源流・浦上川上流の池のわき水から採取されたものだのだそう。
他にもここには「平和の灯」や「(平和)宣言記念板」があり、新宿区内の各施設にも新宿区平和都市宣言が明記されている。「平和の灯」に関しては、『新宿区は、核兵器の廃絶と世界の恒久平和を祈念し、この「平和の灯(ひ)」を設置しました。ここに灯されている「火」は、戦争によって犠牲となった人々の冥福を祈って設置された広島市平和記念公園内にある「平和の灯(ともしび)」と長崎市平和公園内にある「誓いの火」を合わせたものです。(原文まま)』とあって、その意味を知れば知るほど新宿区の平和へのメッセージの強さに胸が打たれる。
新宿区の平和へのメッセージがこれほど強く発信されているのには理由がある。新宿区の公式サイトによれば「昭和20年5月から8月にかけての東京大空襲は本区の様相を一変させてしまいました。(中略)人口も戦前は約40万人近くありましたが、終戦時には約7万8000人と減少してしまいました。(原文まま)」とある。
戦争という過去を伝えてくれているのが区役所アートなのである。
街の雰囲気がはっきり分かれる
1947年(昭和22年)3月15日に、四谷・牛込・淀橋の三区が合併してできたのが現在の新宿区である。四谷という地名は今でも駅や土地の名前で残っているし、牛込も牛込神楽坂・牛込柳町駅などかろうじて残っている。しかし淀橋区はどうだろう、駅名にも地名にもなっていない。しいてその痕跡があるとしたら、中野区との境にある淀橋という橋、あとは「ヨドバシカメラ」である。ヨドバシカメラは淀橋区で誕生したカメラ屋であるためこの名がついたのだそう。
新宿区を歩くと街によってまったく雰囲気が違うものだが、もともと別の区だったことを考えれば、街の雰囲気が違って当たり前なのかもしれない。
新宿シンちゃん。生んだのはあの人
さて、話変わって新宿区のキャラクター「新宿シンちゃん」をご存じだろうか。作者はやなせたかしさん、アンパンパンの生みの親である。
新宿区内のあちらこちらにある避難場所や新宿区案内版に描かれているにも関わらず、きっとほとんどの人がこの「新宿シンちゃん」の存在に気がついていないのではないだろうか。少なくても私は今まで気がつかなかった。だからこそ、この歩っとタイムを読んでいる皆さんにはぜひ「新宿シンちゃん」を新宿区で探してみてほしい。どことなくアンパンマンや仲間のばいきんまん、ドキンちゃんの面影があるからすぐに分かるはずだ。
子どもたちの心を掴むやなせたかしさんの作品、もっとメジャーになってほしいものだ。
新宿区の見え方が変わる
高層ビルが立ち並び、人種も国籍も生き方もさまざま、なんでも受け入れるアジア的なエネルギッシュがあふれ、生きる図太さをも感じるJR新宿駅近辺、アカデミックな雰囲気漂う四谷、日本のフランスともいわれる牛込・神楽坂などのさまざまな顔をもつ新宿をひとくくりにして話すこと難しい。しかしそれこそが新宿の魅力で、歩くほど街の雰囲気の変化を肌で感じる街である。加えて区役所アートを通じて新宿区の歴史や過去を知ることで、また違った目で歩くことができそうだ。一度歩いた街も道も、こうしてまた違った見え方がしてくるもの。これが歩く楽しみである。
<出典>