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猫ちゃん
しのだひろえの歩っとタイム Vol.34

森鴎外にまさかのギャップ萌え!?~森鴎外の歩いた道②~

「もし森鴎外と一緒に散歩をしたなら」そんな妄想から始まった妄想文学散歩。今日は文京区根津、団子坂の上にある森鴎外の住まい観潮楼から森鴎外と共に散歩にでかけよう。

森鴎外、ギャップ萌え!?

夏目漱石の旧居跡の写真1

団子坂を下れば、豆大福や和菓子で有名なお店、そして散歩にぴったりのたいやき屋さんがある。逆に団子坂を上れば、観潮楼の前に鴎外が住んでいた旧居跡がある。どちらに行くか迷うのだが、もし鴎外ならきっと団子坂を下っただろう。というのも鴎外は真っ白なご飯の上に饅頭をのせ茶をかけて食べるという「饅頭茶漬け」なるものを好んだというほどの甘党だったのだ。鴎外と言えば、立身出世を胸に医者の家系から東京医学校予科(東京大学医学部の前身)に入り、卒業後は軍医として陸軍へ。22歳でドイツに留学するという経歴の持ち主である。印象でものを言ってはなんだが、甘党のイメージはない。これこそギャップ萌えなのだろうか。かわいいところあるじゃない、鴎外くん。

私も大の甘党につき鴎外と話が合うのだが、ここは歩っとタイムの都合により旧居跡に向かうこととする。本当は私だってたいやきを食べたい。

さて、駒込中学校まで団子坂を上り住宅街をてくてく歩けば、10分足らずで鴎外旧居跡に到着する。が、ここには「夏目漱石の旧居跡」と石碑が建っているのである。というのも明治23年10月から1年余り鴎外が住み、その13年後の明治36年3月から39年12月の3年10か月の間、夏目漱石が住んでいたのである。

夏目漱石の旧居跡の写真2

しかも「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「草枕」などの作品を次々に発表した漱石文学発祥の地でもあり、「猫の家」とも呼ばれていたそう。今も猫が歩く映えスポットになっている。

そういえば夏目漱石も大の甘党だったという。家族に隠れてこっそりジャムを何度もなめてしまうくらい。漱石くん、君もか。

根津から本郷へ

さらに住宅街を歩いて根津裏門坂へ。その名の通り根津神社の裏門の前にある坂である。ここで根津神社にちょこっと寄りそのまま新坂で本郷へ向かう。新坂は鴎外の小説「青年」にも出てくる坂で権現坂、S坂とも呼ばれる。きっと鴎外も歩いたに違いない。この坂から東京大学グラウンド脇を通り本郷通りにでたら、東京メトロ丸の内線・本郷三丁目駅までまっすぐ歩く。この本郷通りも鴎外の散歩ルートであった。

東京大学の赤門の写真東京大学の赤門
東大前から本郷通りを歩くの写真東大前から本郷通りを歩く

本郷三丁目駅まで歩いたら、ちょこっと寄り道して湯島に足を伸ばそう。そういえば湯島からも近い、上野公園にも鴎外はよく散歩に行っていたようではあるが。

上野と言えば、一年で離婚した苦い思い出も。

森鴎外旧居跡(台東区池之端)にある説明版の写真森鴎外旧居跡(台東区池之端)にある説明版

鴎外は文京区千駄木に引っ越す前、上野公園の近く、今の台東区池之端に住んでいたことがあった。ドイツから帰国後の明治22年(1889年)2月24日に一度目の結婚とともに住まいを構え、「舞姫」を執筆している。ここで長男・於菟(おと)を授かったが、翌年明治23年(1890年)に離婚、千駄木に引っ越した。その後観潮楼に住み、家族と共に東京都内を散歩し歩いた鴎外は上野にもよく足を運んでいたようだ。ここで私は鴎外に聞いてみたい。決して良い思い出があるとは思えないこの池之端の家近くを、新しい家族と共にどんな思いで歩いていたのかと。二度目の結婚は鴎外40歳の時だから13年も前のこと。とはいえ、そりゃぁいろいろあっただろうに。私は同じ女性だからか、どうも先妻の登志子の気持ちを考えてしまう。鴎外との離婚で於菟と離れ離れになった登志子の気持ちとはどんなものかと。鴎外くん、そこんとこどうなの? 以上、いらぬお世話である。

もし鴎外ならどうするだろう

湯島天神の写真

話しを戻して、湯島である。本郷三丁目から湯島に向かう途中で寄りたいのはやはり湯島天神である。梅がきれいだ。

そして花をみたら団子、つまりおいしいものにもありつきたいのが乙女心である。湯島といえばあんみつ、かき氷、洋菓子とおいしいものに事欠かないが、まず外せないのが豆大福。さらに御徒町まで歩けばどらやきで有名なお店も。どれにしようか迷ってしまう。

「もし鴎外ならどうするだろう」そう思い、私の心の中の鴎外に聞いてみる。「豆大福とどらやき、どっちにしようか。」と。そこは医者とは言え、饅頭茶漬けを食べていたくらい甘党の鴎外である。「ふたつとも食べればいいのでは。」という回答が返ってきた。あくまで妄想上の鴎外は、であるが。結局、豆大福、どらやき、草餅を買い大満足で湯島を後にした。

結局、楽しんだもの勝ち

森鴎外の散歩ルートを歩きながら、その人となりを知るにつれ、「森鴎外」という人がイキイキとしだし、まるでまさにこの現代にいるかのような気分にさえなる。バカバカしいと映るかもしれないが、堅苦しいことばかりでは息がつまる。妄想力を発揮して楽しんだもの勝ちだ。すっかり鴎外くんと呼んでしまうほど仲良くなった森鴎外との妄想散歩はまだまだ続く。

<出典>

  • 文京区立森鷗外記念館 特別展「鴎外の見た風景~東京方眼地図を歩く~」文京区立森鷗外記念館
  • 文京区立森鷗外記念館 特別展「谷根千“寄り道”文学散歩」文京区立森鷗外記念館
  • とらや 菓子資料室 虎屋文庫「森鴎外と饅頭茶漬け」
    https://www.toraya-group.co.jp/toraya/bunko/historical-personage/021/

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