東京には三大庭園というのがあるそうだ。「六義園」「小石川後楽園」「浜離宮恩寵賜庭園」である。いずれも江戸時代には大名屋敷があった由緒正しき場所。この三大庭園以外にも東京には美しい庭園がまだまだある。今日はその中のひとつ、肥後細川庭園に足を運んでみた。
肥後細川庭園とは
もともとは肥後熊本藩細川家の下屋敷、抱屋敷があった場所である。江戸地図をみると確かに「細川越中守熊本藩抱屋敷」とすぐに見つかる。
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現代地図1
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江戸地図1
肥後細川庭園入り口にある説明書きによると「明治十五年(1882)からは細川家の本邸となった。その後、都立公園として開園し昭和五十年(1975)、文京区に移管され、平成二十九年(2017)に、文京区立肥後細川庭園と名称を改めた。(原文まま)」とある。
東京メトロ東西線・早稲田駅や有楽町線の江戸川橋駅から歩いて15分ほどで到着するこの庭園の近くにはホテル椿山荘東京があり、この一帯がなんとも上品な佇まいを感じさせる。大人が静かに時間を過ごすのにぴったりの雰囲気だ。
庭園内では和装での結婚写真撮影をするカップルや撮影隊も見かけることがある。見かけた時には勝手に縁起がいい気がしている。
お散歩にぴったりの庭園めぐりも
少し話はそれるが、この肥後細川庭園の周りには、もう2つ大きな庭園・公園がある。
早稲田大学構内にある「大隈庭園」と「新宿区立甘泉園公園」である。いずれも江戸時代は大名屋敷であり、大隈庭園は井伊掃部頭、甘泉園公園は徳川御三卿のひとつである清水家の下屋敷であった。この3つはいずれも徒歩圏内にあり、それぞれ徒歩10分といったところだろうか。巡るだけなら15分20分あれば歩くことができる。
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大隈庭園
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新宿区立甘泉園公園
それぞれの美しさのある庭園・公園だが、その3つを徒歩で巡れるなんて最高だ。一日ゆっくり巡れば気分転換になるし、きっと毎日の心身の疲れを癒してくれるはず。
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現代地図2
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江戸地図2
さて池を中心におき、その周りをめぐる池泉回遊式のこの肥後細川庭園は、この地の高低差を利用したつくりで池を上から眺めることもできる。絵や音楽をつくりだす才能も素晴らしいと思うが、立体的な土地を巧みに利用し美しい庭園しようとするイメージ力もあまりにクリエイティブすぎる。そういう意味ではクリエイティビティを研ぎ澄ますという意味でもいい場所だ
東京ではここだけの「加勢似多」
ちなみに東京ではここでしか食べられない熊本のお菓子がある。「加勢似多(かせいた)」というカリンを良く煮詰めジャムのようにしたものをもち米でできた薄いウエハースのようなもので挟んだもの。江戸幕府献上の由緒正しきお菓子を復元したものだそうだ。松聲閣(しょうせいかく)という庭園内にある大正の香り漂う建物内にある喫茶室で食べることができる。お土産としても売られているが入荷のタイミングによって売り切れていることもある。
花鳥風月に親しむ時間を日常に
今はいつどこにいてもピリッとした緊張を強いられるものだ。だからこそ花や鳥、風や空が心を解放し健康にさせてくれる。ただただぼーっとそこに座っているだけでいいのだ。それだけで頭が整理されるし、そういう時間が心の余裕をつくりだす。歩いたりぼーっとする時間は、ともすると「ムダ」と切り捨てられやすい。歩くのは時間がかかるから、電車でタクシーで移動すればいい。仕事以外の時間も何か“成果”を出すための勉強や行動をしていないといけない、といった具合だ。それも一理あるが一見ムダに思えることにこそ、実は豊かに生きるために必要だと今、多くの人が実感しているのではないだろうか。花鳥風月を楽しむ時間を日常の中に。きっとそれだけで満足できるものがある。