歩くことで心身をもっと健やかに。日常のちょこっと先にある楽しみをお届けする歩っとタイム。
そろそろ都電荒川線の旅も終盤に差し掛かり、北区王子から荒川区に向かって歩いた景色をお届けします。
ふつうがすごく心地よい、きっと。
平日に歩いていると、ふいにまどろんだような時間がやってきてくることがあります。こういう時は何も考えずただただ歩いているわけです。たまに意識をONすると都電荒川線を走る電車の音や、住宅から聞こえるテレビの音や理髪店から聞こえるラジオの音や、そういうものが聞こえてきて、レトロな時間を演出してくれる。
王子からは、栄町、梶原、荒川車庫前、荒川遊園地前、小台と停留所が続きますが、このあたりのまどろみ感は最高で、都電荒川線の線路沿いの道をただただ歩くのにぴったり。
栄町停留所。この「ザ・下町の住宅街にあります」感に懐かしさを感じます。
梶原停留所。ちょうどレトロ電車がきてラッキー、テンションがあがります。
荒川車庫前停留所。都電おもいで広場がすぐ横にある子どもも鉄道好きも喜びそうな停留所です。
鉄道好きとはいえない私でさえ都電おもいで広場には興味津々。ですが、ここは土日祝日のみ開園ということで平日は閉園。Oh!No! 平日自由にできるという自営業の特権を生かしてここまで歩いてきたのに!土日休みの皆さんは思う存分、都電おもいで広場を楽しんでくださいね。
荒川遊園地前停留所の横にある荒川遊園地はリニューアル工事のため休園中。きっとリニューアル後は子どもたちの声で賑わうであろう平和でしあわせな場所。
栄町から荒川遊園地前までは駅同士が近く、一気にコマを進めたような快感がありますね。
小台停留所。荒川遊園地前を過ぎたあたりから景色が変わります。車の通りが多くなってきたよう。人も多いくスーツ姿の人も見かけるようになりました。
宮ノ前停留所、熊野前、東尾久三丁目と停留所が続きます。乗降者が多いです。
町屋二丁目停留所、そして町屋駅前停留所へ到着です。なるほど。ターミナル駅でもある町屋が近いから人通りが多いのですね。栄町からここまでの道のりを振り返るとやっぱり町屋は賑わってます。
時間がゆっくりと過ぎていく
町屋駅前から荒川七丁目停留所を越え荒川二丁目停留所に向かうと、すぐに見えるのが本日の主役である荒川自然公園です。
荒川二丁目停留所のすぐ横で、赤い帽子をかぶった男の子がお出迎え。
この坂を上ると荒川自然公園に入ります。建物の2階にあるような設えですね。
では荒川自然公園の景色をお届けしましょう。
公園の真ん中にある白鳥の池は、荒川区の形を模して造られているそう。池にせり出すように作られた休憩所では、のんびりと池を眺めている人、お昼寝をしている人、おにぎりを食べている人、世間話に花を咲かせている人などそれぞれが思い思いに過ごしており、時間がゆっくりと過ぎていく場所です。まさに荒川区民の憩いの場に違いありません。
地面には正岡子規の句が園内にちりばめられています。文人たちの句にもよく登場する荒川区は、俳句の街として地域おこしをしているようです。
池と言い俳句の埋め込みといい、こう見てみると
「ここは、あ・ら・か・わ・くです!」という主張と愛をいたるところで感じますね。
ただ歩くだけ、そこに幸せがある。
本日歩いた通りは決して大通りの「道」ではなく、時には知っている人しか通らないような暮らしに根付いた「路」。こういうちょこちょことした路にこそ、住む人の人柄や人情が現れるもの。街に人格があるとしたら社交的で外交的というよりは、もの静かで奥手。でも知ればじわりじわりとその魅力がにじみ出るような印象です。
こんなじわじわ滲みでるような魅力が、街歩きや散歩の楽しみのひとつでもあるんですよね。たまには観光地に「よし行くぞ!」と気合を入れていくのもいいけれど、気負わずふつうに生活していること、ふつうの日常こそ幸せだなぁと思わせくれます。
ただ歩くだけ、ただ散歩するだけ。たったそれだけのことだけれど、そこに幸せがある。
きっと2020年の今だから、何気なく住宅街を歩いたり、当たり前の風景を散歩できることが幸せだなと思うのかもしれませんね。