人と倫
知恵の悲しみ。
大人になると知らなくてもよいことまで世の中について
知りすぎたためにかえって人が駄目になる事もある
大人になると知らなくてもよいことまで世の中について
知りすぎたためにかえって人が駄目になる事もある
開高 健
説く(1)
男は特に見栄をはるものだ。その上で強がっているものだ。
そして、識者などというしたり顔をした大人になりたがるものだ。
「交遊」 「友情」 「生きる術」 「愛すること」 「愛されること」
多くの知恵の悲しみを知らないといけないと思い、いろいろなことについて学びたがる。
またそうでないとしても、世間というものはそれを押し付けてくる。
その結果、時には自分というものを見失ったり、真の価値を見つけられなくなったりする。
そして、識者などというしたり顔をした大人になりたがるものだ。
「交遊」 「友情」 「生きる術」 「愛すること」 「愛されること」
多くの知恵の悲しみを知らないといけないと思い、いろいろなことについて学びたがる。
またそうでないとしても、世間というものはそれを押し付けてくる。
その結果、時には自分というものを見失ったり、真の価値を見つけられなくなったりする。
説く(2)
人は、お金がなかったり、潤沢に使えなかったりする時期もある。
その時は、その懐具合によって最良の選択をして食事をし、酒を嗜む。
やがて努力の結果、運にも恵まれ、地位も獲得し、椅子の座り心地もよくなってくると人よりも
ちょっと贅沢な場所に行き、形よく食し、人よりもラベルの知れた酒を呑むことになる。
そうしたとき、かつて貧しき時代に食した酒 その時は最良であった食と酒 それが不味いと感じる。
これも知恵の悲しみとなる。
故に、何が幸福であるかを生活の片隅に追いやってしまいがちである。
その時は、その懐具合によって最良の選択をして食事をし、酒を嗜む。
やがて努力の結果、運にも恵まれ、地位も獲得し、椅子の座り心地もよくなってくると人よりも
ちょっと贅沢な場所に行き、形よく食し、人よりもラベルの知れた酒を呑むことになる。
そうしたとき、かつて貧しき時代に食した酒 その時は最良であった食と酒 それが不味いと感じる。
これも知恵の悲しみとなる。
故に、何が幸福であるかを生活の片隅に追いやってしまいがちである。