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猫ちゃん
しのだひろえの歩っとタイム Vol.36

歩きだそう、新しい時代へ~森鴎外の歩いた道④~

森鴎外との妄想散歩もそろそろ後半。前回の日本橋では寄りたいお店がたくさんあるのだが、ここはがまんがまん。

日本橋が新たな一歩を踏みだす

日本橋の写真

日本橋三越から京橋、銀座に向かって歩きはじめる。昨今、日本橋地区の開発はますます盛んで、福島や三重、富山や滋賀、山口などデザイン性も高くオシャレな地域アンテナショップも進出している。富山のアンテナショップにはバーラウンジもあるくらいで、それはもうちょっと小粋な東京人が喜びそうな粋な場所である。

しかし、この日本橋を訪れる私にとって、いや、きっと多くの人にとって「日本橋」にかかる首都高速道路の存在は、少し残念に感じるだろう。正直、景観の面でいえば「もしこの首都高速道路がなかったら・・・」と思わざるを負えない。一方で、このような景観面と建設されてからの老朽化や交通量の多さからくる構造物の損傷などにより、首都高速道路の地下化事業が進められていることをご存じだろうか。開通予定は2040年というから、その様子をこの目で見れるのか見れないのかそれは定かではないが、きっとより美しく洗練された日本橋を見ることができるのだろう。伝統の街・日本橋は新しい時代への一歩をすでに踏み出しているのである。

鴎外お気に入りの場所を巡る

和紙舗「榛原」の写真

日本橋で鴎外が足を運んだ名店は三越だけではないようだ。日本橋の名代の和紙舗「榛原」さんもお気に入りであり、鴎外はこちらの便箋を気に入っていたといわれている。今でも日本橋交差点すぐにあるこちらのお店に足を運べば、様々な和紙や和小物を見ることができるから、散歩がてら立ち寄るのもお勧めだ。日本橋であれば美味しいもの楽しいものも、伝統もニューウェーブも体験・発見できる。

さて、日本橋から京橋、そして銀座に向かう。この道は一本道で広く名店もたくさんあるし、それはもうキョロキョロしながら楽しんで歩ける道だ。とにかく歩きやすい。

京橋を過ぎ銀座に来たら少し寄り道をして有楽町へ向かう。有楽町も鴎外が足を運んだ場所である。というのも「有楽座」というドイツ式の洋風劇場があったからだ。有楽座は1908年(明治41年)11月に開場、日本で初めて近代劇場の設備を実現した。書籍『鴎外の見た風景~東京方眼地図を歩く~』によると「鴎外が翻訳したイプセンのジョン・ガブリエル・ボルクマンが小山内薫主宰の自由劇場によって有楽座で上演されたのを契機に新劇の公演が相次ぎ、近代劇場の拠点として知られるようになります。」とある。またジョン・ガブリエル・ボルクマンの公演の観劇体験は小説「青年」に生かされているそう。そんな逸話を知ると、当時の有楽座に行き観劇をしてみたいという思いにも駆られる。

こだわりを持ち生きる時代へ

小説を書き観劇もし、食にも審美眼があった(ただし、風変わりな甘党でもあるが)鴎外。きっと、本物に対するこだわりも強かっただろう。協調性や共感がもてはやされる時代であれば、きっと周りからは風変わりで扱いにくい奴に映ったのかもしれない。しかし、特にこれからの時代において自分なりのこだわりを持つことは個人が幸せに生きるのに必須なのではないだろうか。本当に人を惹き付けるのは誰に何を言われても捨てない「自分のこだわり」、つまり自分なりの生き方。周りから期待された道を弱弱しい足取りで歩いているのでない。自分なりの道を自分の意志で自分なりのこだわりを持って歩む姿に魅力がある。混沌とした今だからこそ、こだわりをもって歩きだそう、自分らしい新しい時代へ。

<出典>

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